毎月恒例のDeep Game Newsです。6月はとにかく動きの多い一カ月でした。中でも一番盛り上がったのは、Retroid Pocket Novaという4:3 OLEDの横型機が発売されたこと。
AnbernicがついにSnapdragon機を予告し、AYANEO Pocket Micro 2は発表から即完売、そのまま実質キャンセルという急展開、ValveのSteam Machineもグローバル発売を迎え、Intel Arc G3 Extremeを積んだMSIの新型も登場と、レトロ系からハイエンドPCまで一気に賑やかになりました。
一方でメモリやストレージの高騰を背景にした値上げの波もはっきり見えてきた月です。今月は全10製品、発表・予約系と発売・販売中の2グループに分けてまとめていきます。
── 発表・ティザー ──
Anbernic RG 55G1

中華ハンドヘルドでおなじみのAnbernicが、6月18日に公式YouTubeでA New Core. A New FrontierというキャッチとともにRG 55G1を予告しました。これまでのRGシリーズの命名規則を一新してきたあたりからも、Anbernicがこの一台を新しい節目として打ち出したいのが伝わってきます。
わかっている特徴
- SoC:Qualcomm Snapdragon採用(Anbernic初。ただし正式な型番は未発表)
- スティック:3D Hall-Effectスティック(RGBリングライト付き)
- トリガー:Hall-Effectトリガー
- 外装:2.5D曲面ガラス/デュアル前面スピーカー/内蔵ファン
- カラー:Indigo / Retro Gray / Black
- デザイン:Nintendo Switch Liteライクな横型
- 画面サイズ・価格・発売日・解像度・RAM・バッテリー:すべて未発表
最大のポイントは、これがAnbernic初のSnapdragon搭載機になるという点です。これまでAnbernicはAllwinnerやRockchip、UNISOCといったチップを中心に使ってきたので、Qualcommに踏み込むのはブランドとしてかなり大きな方向転換です。ただ、肝心のチップの型番はまだ確定していません。Geekbenchに上がったとされる流出データではQTI SM4450=Snapdragon 4 Gen 2を示唆する一方、別の情報では上位寄りのチップという話も出ており、現時点では食い違っています。なのでSnapdragonを積むのは確実だが、型番はまだわからないというのが正確なところ。実機のハンズオン動画も少しずつ出てきていて、Hall-Effectスティックやトリガー、RGBリングは確認できています。価格と性能がはっきりするまでは判断保留ですが、Anbernicがどんなチップを選んだのかは続報を待ちたいところです。
情報元:Anbernic公式ニュース / Anbernic公式サイト
ROG Xbox Ally X20 Bundle

ASUSの20周年を記念した特別版のROG Xbox Allyです。2025年に発売された無印のROG Xbox AllyやAlly Xとは別物で、これは20周年バンドルという位置づけのスペシャルエディション。型番にX20が付いているのが目印です。なんとARグラスまで同梱してくるという、記念モデルらしい盛りっぷりになっています。
主なスペック・概要
- チップ:AMD Ryzen AI Z2 Extreme
- ディスプレイ:7.4インチ OLED(Nebula HDR・120Hz・最大1400nit)
- 同梱:XREAL R1 ARグラス
- 位置づけ:ASUS 20周年特別版(X20 Bundle)
- 価格・発売日:未発表
7.4インチのOLEDで最大1400nitというのはハンドヘルドとしてはかなり明るい部類で、HDRコンテンツの見栄えに期待できます。そしてやはり目を引くのがXREAL R1 ARグラスの同梱。ハンドヘルド本体の画面で遊ぶだけでなく、ARグラス側に大画面を投影してプレイするという使い方を見据えたバンドルです。記念モデルなので数も限られそうですし、価格と発売日がまだ出ていないのが悩ましいところ。無印のAlly/Ally Xと混同されがちなので、買うときは20周年のX20バンドルかどうかをよく確認したい一台です。
Acer Nitro Blaze Link

Acerから出てきた、ちょっと毛色の違うハンドヘルドです。これは本体でゲームを動かす機械ではなく、PCのゲームをストリーミングして遊ぶことに特化したLinuxベースの専用機。いわば手元の薄い受信機で、母艦となるゲーミングPCがあって初めて真価を発揮するタイプです。
主なスペック・概要
- 用途:PCストリーミング専用
- OS:Linuxベース
- ディスプレイ:7インチ / 1920×1200
- 通信:Wi-Fi 6
- メモリ:1GB RAM
- ストレージ:8GB eMMC
RAMが1GB、ストレージが8GB eMMCというスペックを見て、えっ?となるかもしれませんが、これはストリーミング専用機なので問題ありません。ゲームの処理は全部母艦PCがやって、本体は映像を受け取って操作を返すだけ。だから本体側は最小限の構成で済むわけです。考え方としてはSteam Linkの携帯機版に近く、家にハイスペックなゲーミングPCがある人なら、リビングや寝室で寝転がりながらそのPCのゲームを遊べる、という使い方ができます。逆に母艦がない人にはまったく刺さらない、用途がはっきり分かれる製品です。こういう割り切った設計は個人的には嫌いじゃないです。
Epilogue 64 Operator

ゲームボーイのカートリッジをPCに繋いで吸い出せるGB Operatorや、スーファミ版のSN Operatorで知られるEpilogueが、N64版の64 Operatorを6月23日に予告しました。ちょうどN64の30周年に合わせた発表です。
概要
- 用途:N64カートリッジをPCに繋いでバックアップ&そのままプレイ
- シリーズ:GB Operator / SN Operatorに続くN64版
- 状況:6月23日に予告(詳細は近日公開)
- 価格・発売日:未発表
OperatorシリーズはPCに繋いで手持ちの実カートリッジを吸い出してバックアップでき、さらにそのカートリッジをPC上でそのまま遊べるのが特徴です。手持ちのソフトを劣化させずにデータとして残しておきたい、という保存目的でも人気のあるシリーズで、そのN64版が来るというのはレトロファンには嬉しい予告です。N64はカートリッジの形状や容量が独特なので、ハードウェア的にどう対応してくるのかが気になるところ。現時点ではまだ予告の段階で、価格も発売日も未発表です。詳細が出てきたら改めて取り上げたい一台です。
── 発売・出荷・予約開始・販売中 ──
Retroid Pocket Nova

待望の4:3 OLED横型機がついに実際に発売されました。Retroidが6月にティザーから少しずつスペックを小出しにしていって、6月27日に販売開始という流れで、毎週のように情報が更新されて盛り上がった一台です。横型でありながら4:3比率のAMOLEDを積んできたのが最大の見どころです。
主なスペック
- ディスプレイ:4.5インチ / 4:3 AMOLED(1280×960・120Hz・ピーク500nit・コントラスト100,000:1)
- チップ:Qualcomm QCS8550(Snapdragon 8 Gen 2相当・Adreno 740)
- メモリ・ストレージ:8GB or 12GB + 128GB UFS(microSD対応)
- バッテリー:5000mAh
- 通信:Wi-Fi 7 / Bluetooth 5.3
- OS:Android 13
- 映像出力:USB-Cで4K出力対応
- 重量:255g
- 価格:$229〜(8GB+128GB・約37,000円)/ $269(12GB+128GB・約43,600円)※公式ストア価格の換算
- 発売:2026年6月27日 販売開始(goretroid.com)
4:3のAMOLEDというのがとにかく良いです。ゲームボーイ・スーファミ・PS1あたりの古いゲームは画面比率が4:3に近いものが多く、16:9のパネルだと左右に黒帯が出て表示が小さくなりがちでした。Novaは最初から4:3に振り切っているので、レトロゲームを画面いっぱいに、しかも有機ELの黒の締まった発色で楽しめます。チップもQCS8550(Snapdragon 8 Gen 2相当)と十分パワフルで、PS2やGameCube、PSPあたりまで快適に狙えるラインです。Retroidは横長16:9系のPocket 6系も持っていますが、それとは明確に路線を分けて4:3で遊びたい人向けを出してきたなと思いました。255gと軽めで持ちやすく、早く実機を触ってみたいです。
情報元:Retroid公式製品ページ / Retroid公式サイト
AYANEO Pocket Micro 2

AYANEOの超小型レトロ機の第2世代で、6月26日に正式発表されたのですが、発表直後に初回特価分が全グレード即完売。そしてそのまま事実上のキャンセルという、なんとも珍しい顛末をたどった一台です。買えた人はごく少数、という結末になりました。
主なスペック
- チップ:Snapdragon 865クラス
- ディスプレイ:3.5インチ IPS / 960×640(3:2比率)
- バッテリー:3,950mAh(前世代比+52%)
- スティック:TMRスティック(LED照光付き)
- 冷却:アクティブクーリング
- 端子:フル機能USB-C / 3.5mmジャック / 内蔵マイク
- 価格:$239〜$279(初回特価・3グレード3色・約38,700円〜約45,200円)
- 発売:6月26日発表 → 即完売 → 事実上キャンセル
手のひらに収まる3.5インチサイズにTMRスティックとアクティブ冷却を積み、バッテリーも前世代から52%増という、超小型機としてはかなり気合いの入った内容です。ところが問題はその後。6月26日の発表で初回特価分が即完売したのですが、AYANEO公式Discordの説明によると、製造されたのはわずか100〜110台ほど。実質サンプルバッチのような数しか作られておらず、No restock(再入荷なし)とアナウンスされました。AYANEOのJohn Nee氏はコスト面の問題があり、不当に高く売りたくないので販売停止を選んだという趣旨の説明をしています。メールリストの登録者数が一定の最低発注数に達すれば再生産を検討する可能性は残っているものの、現時点では実質的にキャンセル扱い。発表されたのに買えない、という体験をした人がほとんどという、なかなかモヤモヤする展開でした。
情報元:AYANEO公式製品ページ / AYANEO公式サイト
Steam Machine

ValveのSteam Machineがいよいよ発売を迎えました。これはハンドヘルドではなくリビング向けの小型ゲーミングPCですが、SteamOSがいよいよ据え置きのリビング機へ本格的に進出してきたという意味で、今月の大きなニュースのひとつです。日本では6月22日に突然販売が始まり即完売、グローバルでは6月30日発売という流れになりました。
主なスペック・概要
- チップ:AMD半カスタム(Zen4 + RDNA3)/GPU性能はSteam Deck比 約6倍
- OS:SteamOS
- 狙い:4K60fps
- 価格(グローバル):$1,049(512GB・約17万円)/ $1,349(2TB・約21.8万円)※コントローラー別
- 価格(日本・KOMODO STATION):189,980円(512GB)/ 249,980円(2TB)※コントローラー同梱版あり
- 発売:グローバル6月30日 / 日本は6月22日に予約なしで販売開始&即完売
中身はAMDの半カスタムチップでZen4とRDNA3の組み合わせ、GPU性能はSteam Deck比で約6倍とされており、4K60fpsを狙えるパワーを持っています。これをSteamOSで動かすので、リビングのテレビに繋いでコントローラーで遊ぶ、いわばPCゲーム機としての使い方が想定されています。注目は日本の動き。KOMODO STATION経由で6月22日に予約キューもなく突然販売が始まり、512GBが189,980円、2TBが249,980円という価格にもかかわらず即完売しました。コントローラー同梱版だと512GBバンドルで204,980円、2TBバンドルで264,980円という値付けです。グローバル価格と比べると国内はやや高めですが、これはメモリ・ストレージの高騰や為替の影響が大きいところ。それでも即完売したあたり、リビングでSteamを大画面で遊びたい層の需要はしっかりあることがわかります。
情報元:Steam公式ニュース / Steam Machine公式ページ
MSI Claw 8 EX AI+

MSIのClaw 8 EX AI+が6月23日に発売され、レビューが一斉に解禁されました。世界初のIntel Arc G3 Extreme搭載ハンドヘルドという技術的な目玉がある一方で、$1,799(約291,000円)という強気の価格が大きな論点になっています。
主なスペック
- チップ:Intel Arc G3 Extreme(Arc B390 iGPU・14コア=2P+8E+4LP・最大4.7GHz・Intel 18A)
- ディスプレイ:8インチ / 1920×1200・120Hz VRR(OLEDではなくIPS系)
- メモリ:32GB LPDDR5X-8533
- ストレージ:1TB SSD
- バッテリー:80Wh
- 価格:$1,799(約291,000円・国内正規価格は未発表)
- 発売:6月23日
目玉はなんといってもIntelの新世代GPU Arc G3 Extremeを世界で初めて積んだこと。GPU部分のArc B390は競合機比でおよそ50〜60%高速とNotebookcheckが計測しており、Intelのハンドヘルド向けグラフィックスがついに競争力を持ち始めたことを示す一台です。メモリも32GBと潤沢で、性能面では文句のない構成。ただ問題はやはり価格と画面です。$1,799(約291,000円)という値付けはハンドヘルドとしてはかなり高く、しかもこの価格でディスプレイが有機ELではないというのが惜しいと感じる人は多そうです。MSI自身も厳しい年で、さらなる値上げの可能性があるとコメントしており、部材高騰の影響がハイエンドにもはっきり出ています。性能は素晴らしいけれど、この値段なら有機ELが欲しかった、というのが正直な感想です。
TRIMUI Brick Hammer Pro U

縦型エミュレーター機で人気のTRIMUIから、CNCアルミ削り出しボディの新型Androidハンドヘルドが登場しました。6月24日に予約が始まったのですが、ここでちょっとした価格混乱があり、出荷も含めて話題になった一台です。
主なスペック
- チップ:Snapdragon G2 Gen 1(Adreno A21)
- ディスプレイ:3.95インチ / 1024×768 フルラミネートIPS(324ppi)
- メモリ・ストレージ:6GB + 128GB(microSD対応)
- スティック:ホールスティック
- バッテリー:5000mAh
- 映像出力:USB-Cで映像出力対応
- OS:Android
- 価格:$199.99(trimui.net公式・約32,400円)
- 予約:6月24日開始 / 出荷:7月30日予定
CNCアルミの筐体に3.95インチの正方形に近い1024×768パネルという構成で、縦型のレトロ機としてはかなり質感の高い仕上がりです。ただ6月24日の予約開始時に価格情報が二転三転し、当初の想定より高くなったことで、予約者に対して、差額を支払う、標準版のBrick Proに交換する、全額返金するの三択を提示する事態になりました。別ストアではより高い予約価格も出ていて、流通まわりがちょっと怪しいことになっています。出荷は7月30日予定。同時に廉価なLinux版の姉妹機Brick Proも発表されているので、どっちが自分に合うかは予算と用途で選ぶ形になりそうです。製品自体は良さそうなだけに、価格と流通の落ち着きを待ちたいところ。
情報元:TRIMUI公式製品ページ / TRIMUI公式サイト
まとめ
Retroid Pocket Novaという4:3 OLEDの横型機が実際に発売され、AnbernicがついにSnapdragon機を予告と、エミュ機はまだまだ出ることを感じさせる1ヶ月でした。AYANEO Pocket Micro 2の実質キャンセルは本当に残念なので、なんとか再生産してほしいです。私がAYANEOシリーズで一番好きなのがMicroですからね。
ハイエンドではSteam Machineのグローバル発売、Intel Arc G3 Extremeを世界初搭載したMSI Claw 8 EX AI+と、見どころの多い月でした。
ただ、その裏でメモリ・ストレージの高騰がハンドヘルド全体の価格を押し上げているのも事実。Steam MachineやMSI Clawの高めの価格も根っこは同じで、買う側としてはなかなかシビアな状況が続きそうです。気になる機種があるなら、価格が落ち着くのを待つか、早めに動くか、悩ましい時期に入ってきました。ちなみにSteam Machineは2TBモデルを気絶しながら購入したので、絶対にレビュー動画見てくださいね。